水内総領事よりご挨拶

平成29年2月23日
天皇誕生日祝賀レセプションにおいて(平成28年12月2日)

デューン大臣
ガイゼル市長
御列席の皆様
 
本日は天皇陛下の83歳の誕生日を祝賀するレセプションに数多くの皆様にお越しいただき感謝します。
 
半世紀前に当地に日本人コミュニティが出来たころ、私の妻は子女として当地に暮らしていたので、妻とともに私も、「Japaner in Düsseldorf 2.0」に当たります。昨年舞台で歌っていただいた「さくらコーア」の方々は「1.5」、今アニメソングを歌ってくれた若い2人は、さながら「3.0」でしょうか。彼らは、日本とドイツの文化の優れた点を継承した、謂わばハイブリッド種です。アニメソング以外でどんな才能があるか、あとで日独国歌を歌う時に見せてくれるはずです。
 
さて、本年6月には日本商工会議所が創設50周年、8月にはNRW州が70歳の誕生日を祝いました。右を通じNRW州が生まれてからの歴史と日本人コミュニティの関わりを学ぶ良い機会となりました。1つの知見は、NRWと日本は過去半世紀に留まらず、300年以上の繋がりを持っている、ということです。Lemgo出身のLipperであるEngelbert Kaempferが長崎を来訪したのは1690年のことでした。Kaemperが書いた「日本誌」は、後世の日本学のバイブルともいえる作品です。
 
この1年、多くのことを経験し、多くの成果を挙げたと思いますが、一方で課題も確認しました。そのうちの1つは、NRW州における日本のプレゼンスがデュッセルドルフに偏りすぎていて、より広く、より深い関係構築に至っていない、ということです。NRW州と日本との姉妹都市関係は2つしかありません。1つは京都との50年以上続くものですが、残念ながら州都デュッセルドルフではなく、ケルンによって担われています。もう1つはメアブッシュと四條畷の関係です。幸いなことに、ヴィリッヒとエッセンが日本との「友好都市」関係を結ぼうとしているほか、私の住むエアクラートのSchulz市長も関心を有しています。
 
エッセンの場合は、NRW州と福島県の過去3年に及ぶ協力関係の延長線上に位置づけられるもので、この場を借りてこのために尽力されたデューン大臣、レンメル環境大臣ほか関係者の皆様に感謝を申し上げます。デュッセルドルフにも美しい結婚相手を仲介することができたら嬉しく思います。
 
天皇陛下におかれては、最近陛下が「退位の意向」を表明されたことがドイツのプレスでも報じられました。事実は、「退位したい」と述べたのではありません。国家元首としての責任は大きく、一方、高齢によって天皇が職責を十分に果たせないことは問題であるので、政府が適切な検討を行うようにとの「希望」を述べられたのです。天皇が日本国憲法上、象徴的な権能しか持たず、決定を自ら下すことができません。ポピュリズムの対極にある民主主義がどのようなものであるべきか、陛下御自身が範を示しているものだと理解します。
 
本年は、国際的にも英国のEU離脱やトランプ米大統領の選出、日本でのG7サミットの開催等多くのことがありました。来年はNRW州の選挙や、連邦議会選挙が行われ、フランスでも大統領選挙が予定されている等、欧州にも変化が予想されます。近くプーチン・ロシア大統領が訪日して日露間の関係にフレッシュな風が吹く可能性があります。東アジアにおいては、北朝鮮の動向は予測しがたく、また、自由貿易にとって不可欠な海洋の自由がチャレンジされています。トランプ大統領下の米国の将来を見極める必要もあります。自由と民主主義という基本的な価値観を共有する日独両国の国民が、ともに手を取り合って、よりよい世界を築いていくことが、これまでになく重要となっています。その一例として、インダストリー4.0が挙げられましょう。
 
来年は在デュッセルドルフ日本国総領事館も開館50年を迎えることとなりますが、館員一同、皆様とともに責任を果たしていきたいとおもいます。皆様からの熱い御支援と御指導をいただければ幸いです。
 
御清聴ありがとうございました。